ずまログ

日常/非日常の印象を徒然なるままに綴ります

2020-01-19から1日間の記事一覧

短編22:月刊「あしか文芸」

人をおちょくっているような、冗談のような文章だが、著者特有のユーモアが感じられる。

短編21:図書館奇譚

もう一つの羊をめぐる冒険というべきか。僕はまだ子供で、羊男は大人。脱走のシーンはまるで、自分の影と協力して門番が支配する壁に囲まれた街から逃げ出そうとする物語りに似ている。

短編20:書斎奇譚

啞の美少女と先生という組み合わせは『1Q84』のふかえりとその保護者を思い起こさせる。薄闇の描き方が秀逸だし、光が苦手な先生は夢読みやリーダーに繋がっている。ぬめぬめとした手触りの何やら分からないものに対する気持ち悪さが伝わってくる。

短編19:窓

切なく微笑んでしまう作品だ。22歳の僕はどんなだったろうと自動的に思い返してしまう。「リアリティーとは伝えるべきものではなく、作るべきものなのだ。そして意味というのはそこから生まれるべきものなのだ」というくだりに著者の執筆姿勢が現れているよ…

短編18:1963/1982年のイパネマ娘

イパネマ娘と同じように、村上春樹作品の「僕」も歳を取らない。僕が高校生のとき、「僕」は僕よりも年上だったし、今の僕は「僕」よりも年上になってしまっている。今後は僕らの歳の差はひらく一方だ。イパネマ娘と主人公の対話のように僕も「僕」と時々会…

短編17:あしか祭り

思わずクスリと笑ってしまう。メタファーとしてのあしか。著者にとっては文芸誌の担当者とか文壇の関係者などを暗に表しているんだろう。一般世間にもあしか的なるものは存在する。僕らが社会的存在である以上仕方ないのかも知れない。いくら個人的でありた…

短編16:サウスベイストラット

私立探偵が主人公というアクション小説のようなハードボイルドな内容。サウスベイの街の描写が寒々として素敵だ。待つことが大事というセリフに著者の執筆姿勢が偲ばれる。おそらく、『世界の…』のハードボイルドワンダーランドにこの世界観が吸収されたのだ…

短編15:彼女の町と、彼女の綿羊

この短編は三段階に色合いが微妙に変わる。まず札幌の友人を訪ねる場面。人生は偶然に支配されているという主張とすでに時は過ぎてしまったという感慨が述べられる。そして、転換機を経て二段階目→ホテルに移動し彼女の町と綿羊について語る女性にTV画面越し…

短編14:タクシーに乗った吸血鬼

異世界への穴は日常の中にポッと開いているものだ、ということを思わせる。ありそうな話だし、この運転手が本当に吸血鬼かどうかなんて実証はできないしする意味もない。可能性はありうるのだ、というだけで十分なのだ。それにこの高度情報化社会では、どこ…

短編13:32歳のデイトリッパー

今の僕に18歳に戻りたいかと聞かれても、戻りたくないというだろう、一度だけで十分だと。だから主人公の言葉にも素直に肯ける。この話に出てきた18歳の彼女がせいうちの様にかわいいという記述が気になる。せいうちの寿命は、20年から30年と言われている。…

短編12:あしか

孤独について描かれている。孤独であるというのは、ある意味で幸せなことだと思う。でも人間の群れの中にいると、そんな孤独を放っておいてくれない。お節介な人は必ずいるものだ。また、長い目でみればそういう人の有り難みも感じたりすることもあるものだ…

短編11:カンガルー日和

動物園に、生まれたばかりのカンガルーの赤ちゃんを見に行くカップルの話。それだけといえばそれだけなんだけど、でもそれだけじゃない。大袈裟にいえば、人生の縮図がそこには描かれている。何かをしようとすれば、それを邪魔するようなあれやこれやがあり…

短編08:かいつぶり

これはもう楽しく読んだ。著者らしいユーモアが溢れている。それに、ドアまでたどり着く経緯や、ドアにたどり着いてからの係員とのやり取りも不条理に満ちている。

短編07:眠い

ナルコレプシーの様な病的な眠気の話かと思うが、読み進めるうちにどうやら違う様だと感じる。誰かの結婚式に出席するたびに眠くなるというのだ。主人公の恋人は、それについて理由を探そうとする。主人公はただ眠いだけなんだ、と言って彼女のいうことに取…

短編06:四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて

なんて切ないお話だろう、100パーセントの女の子に出会うということはどういうことなのか。それは奇跡だ。若い頃にはそれが人生で一度あるかないかのことだということが実感として理解できない。ある程度歳を重ねてみれば、そういう出会いが奇跡的なものだと…