ずまログ

日常/非日常の印象を徒然なるままに綴ります

短編15:彼女の町と、彼女の綿羊

この短編は三段階に色合いが微妙に変わる。まず札幌の友人を訪ねる場面。人生は偶然に支配されているという主張とすでに時は過ぎてしまったという感慨が述べられる。そして、転換機を経て二段階目→ホテルに移動し彼女の町と綿羊について語る女性にTV画面越しに出会う。初めのうちは綿羊は純粋に畜産用語として羊のことを指していたが、三段階目になると、彼女や主人公の人生で起こる様々なことを指して綿羊と表現している。「彼女の綿羊たち…僕は僕の街で僕の綿羊たちのために…」。最後に、僕は彼女に会いにいくことは無いだろう、そうするにはあまりに多くのものを捨ててしまったのだからと締めくくられる。それは、裏を返せば残ったものも全て捨てて仕舞えば会いに行けるということなのかも知れない。例えば影を捨てて壁に囲まれた街へ入っていったあの主人公のように。