短編06:四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて
なんて切ないお話だろう、100パーセントの女の子に出会うということはどういうことなのか。それは奇跡だ。若い頃にはそれが人生で一度あるかないかのことだということが実感として理解できない。ある程度歳を重ねてみれば、そういう出会いが奇跡的なものだということは分かる。でも、その奇跡に身を投じる程には経験を積みすぎてピュアでは無くなっている。そこには救いはなく、静かな悲しみのようなものがあるだけだ。
あるいは、啓示の様なものかも知れない。別に女の子ではなく何かの観念に出会った時にそれに身を投じるのか、ちょっと様子をみましょうとするのか。様子をみている間に物事のあり方はすっかり変わってしまっているかも知れない。歳を重ねてからその観念の価値に気づいたとしてもその頃には戻れない。そんな悲しみを感じる。
この短編は、『海辺のカフカ』の佐伯さんとその恋人のエピソードに繋がっている、と思う。あまりに切ない、恋のお話しでした。