ずまログ

日常/非日常の印象を徒然なるままに綴ります

分水嶺を越えて

分水嶺のあちら側とこちら側で気候や植生が異なる様に、人生にも、前と後を隔てる分水嶺というべき地点があるのだと思う。くぐり抜けているときはそうは思えないが、後から振り返ると確かにそこが分水嶺だったのだと分かる。それ以前と以後では世界のあり様が確かに違ってみえる。
僕についていえば、うつの谷間に入り込んだあの十ヶ月の前後で、色々なことが随分変わってしまった。以前そこにあった、エネルギーの核のようなものが、失われてしまった。失われたものを取り戻せないかと、あらぬ試行錯誤したり足掻いてみたりもしたが、甲斐はなかった。失われたものは、失われたままだった。新しい自分をまるごと受け入れるしかない。時間はかかったが受け入れて随分楽になったと思う。
何かを失なえば、何かを得ることができる。それは経験的にいえることだ。僕の場合、残された時間のかけがえの無さを、骨身に染みて学ぶことができた。
分水嶺を越えてから、僕は自分を甘やかすことができるようになったと思う。クリニックには今も通い、お薬を飲み、なるべくやりたいことだけやる。疲れたら休む、というか疲れる前に意識的に休息をとる。エネルギーが枯渇しないように。もっと出来るのに、と思ってしまうあちら側の自分と折り合いをつけながら。