ずまログ

日常/非日常の印象を徒然なるままに綴ります

短編23:おだまき酒の夜

これもどちらかというと、奇譚の部類に入るのでは無いか。限られた文字数の中に意外と沢山のキャラクターが登場し押し合いへし合いしている。内容はぶっ飛んでいるが、僕は好きだ。あと、おだまき酒が飲んでみたくなってくる。どんなものか分からないけど。

短編21:図書館奇譚

もう一つの羊をめぐる冒険というべきか。僕はまだ子供で、羊男は大人。脱走のシーンはまるで、自分の影と協力して門番が支配する壁に囲まれた街から逃げ出そうとする物語りに似ている。

短編20:書斎奇譚

啞の美少女と先生という組み合わせは『1Q84』のふかえりとその保護者を思い起こさせる。薄闇の描き方が秀逸だし、光が苦手な先生は夢読みやリーダーに繋がっている。ぬめぬめとした手触りの何やら分からないものに対する気持ち悪さが伝わってくる。

短編19:窓

切なく微笑んでしまう作品だ。22歳の僕はどんなだったろうと自動的に思い返してしまう。「リアリティーとは伝えるべきものではなく、作るべきものなのだ。そして意味というのはそこから生まれるべきものなのだ」というくだりに著者の執筆姿勢が現れているようで圧倒される。物語りの終わりまで、ハンバーグステーキの彼女と寝ることになるのだろうなと思いながら読んでいた。

短編18:1963/1982年のイパネマ娘

イパネマ娘と同じように、村上春樹作品の「僕」も歳を取らない。僕が高校生のとき、「僕」は僕よりも年上だったし、今の僕は「僕」よりも年上になってしまっている。今後は僕らの歳の差はひらく一方だ。イパネマ娘と主人公の対話のように僕も「僕」と時々会っているのだろう。暗い廊下にある結び目、いるかホテルの古いドアを彷彿とさせる。そこで「僕」は「僕」と出会うのだろうし、僕も僕に出会うことができるかも知れない。